こんにちは。くまぶしです。
今日から三日間、山のステーキ屋で仕事です。昨日はせっかくの休みだったのに、学会の準備があったので、結局のところお休みがなくなってしまいました。たいへん不満なくまぶしです。

今日はお盆なので、お盆の話をします。くまぶしの近所には、立派な門がついてる農家がたくさんあるのですが、門の所にぼんぼんが吊ってあってきれいです。

お盆という言葉は、盂蘭盆会(うらぼんえ)から来ていて、これはサンスクリットで逆さづりという意味だそうです。ホテルに置いてある仏教説話集とかで読んだことがある方も多いと思いますが、お釈迦様の弟子の目連さんのお母さんが、餓鬼道で逆さづりになって苦しんでた話ですね。それで、目連さんがお釈迦さまに頼んで、施餓鬼の方法を教えてもらって、お母さんは極楽に行けましたというお話です。

施餓鬼会というのは、安吾(雨期にする坊さんたちの強化合宿)の最後の日に、集まっているお坊さんたちに施し物をすると、餓鬼道に落ちてるお母さんにも、おすそ分けの施しがあげられて救われるよという行事です。うがった見方をすると、坊さんたちがお布施をたかっているかのようですが、目連さんはお釈迦様の弟子の中で、神通第一の人だったから、実際に神通力でお母さんが救われるところを見たそうです。だからたぶん本当なんでしょう。くま。

目連さんの話は、盂蘭盆経というお経に書いてある話だそうですが、盂蘭盆経は中国で書かれたお経です。こういうのを、ちょっと言葉が悪いですが、偽経といいます。悪くない言葉でいうと、中国撰述経といいます。まあ、どっちでもいいのですが、いわゆるもともとの仏教じゃない要素がたくさん入っているといわれてます。たとえば、さっきのお話で、地獄で苦しむとか、極楽に行くとかいうのは、本来的な要素ではないといわれてます。ブッダの説だと、輪廻していることが苦で、輪廻しなくなることが成仏なので、極楽に天人として転生しても、別に救われたことにはなりません。ただ、ブッダの仏教は、ちょっとインテリの宗教なので、普通の人は、本気でブッダがいう意味での成仏をしたいとは思わないことが多いです。

話がそれましたが、お盆というのは、そういうわけで、中国仏教の施餓鬼会なわけです。けれど、日本にもともとなかったかというと、そうともいえません。一般には、もともとあった先祖供養のお祭と、中国から聞いた盂蘭盆会が習合したものだとされています。

日本にもともとあった行事というのは、推測ですが、年に二回、春のはじめと秋のはじめに、ご先祖様がやってきて、お祭りをするというものだったと思われています。盆と正月が一緒に来たようだというような言い回しが今でもありますが、昔は正月が二回あって、それが今の盆と正月になったという説もあります。盆暮れというと、実家から離れている人が地元に帰るときなわけですが、これは、ご先祖が帰ってくるのと同じわけですね。

仏教行事としての盂蘭盆会(施餓鬼会)の場合には、地獄なり餓鬼道なりで苦しんでるだろうご先祖を、供養することで救ってやろうとするわけで、別に、ご先祖様がこの世に帰ってきたりするわけではありません。そういう意味では、今のお盆は、本質的には、仏教行事であるというよりは土着のお祭に近いといえそうです。

日本のお盆では、お盆の最初の日に、地獄の釜の蓋が開いて、それでご先祖たちが出てきて、きうりの馬に乗っておうちに帰ってくるわけです。それで、子孫の顔を見て、ご馳走を食べて、一緒に盆踊りをして、最後になすびの牛に乗って帰っていくわけです。来るときは馬なので早いですし、帰りは牛なので名残を惜しんでゆっくり帰ります。一説には、牛だとお土産を運べるから便利だといいます。

さて、このように、お盆というのは、ひとことで言うと、ご先祖がやってきて、一緒に遊んで、それから帰っていくのをお見送りするというお祭りです。このようにいうと、前にお話したアイヌのクマの神さまと同じ構造だということがわかりますね。クマの神さまは、カムイコタンからクマの毛皮を着てこの世にやってきて、帰るときに毛皮と肉を置き土産に置いていくわけです。人間がクマを狩ることには、クマの神さまがカムイコタンに帰るのを手伝うという意味があります。また、やっぱり前にお話ししたタタリのお祭というのも、基本的には同じことだと思います。タタリの神さまは、突然やってくる神さまなので、びっくりしますが、神さまがいるのだ(たたり)ということがわかった時点で、おもてなしをして、それからさようならをするわけです。

つまり、やってくるものがいて、それをおもてなしして、最後にさようならをするというのが、お祭の基本的な構造なわけです。もっとも、こういうお祭は、いわゆる「高級な」宗教ではあまりやりません。「高級な」宗教というのは、例えばブッダの仏教とか、ジーザスの福音とかで、わりあいインテリの宗教のことです。

くま宗教学では、お盆のような簡単なお祭も、もちろん宗教なのですが、いわゆる「高級な」宗教と区別するために、アルカイックな宗教とよんでいます。アルカイックというのは、古代的ということですが、アルケーっぽいという意味でもあります。根本的という意味ですね。それで、一般の考えとは逆なんですが、簡単なお祭をするようなアルカイックな宗教の方を基本的な(エレメンタルな)宗教であると考え、それに対して、いわゆる「高級な」宗教は、特殊な宗教だと考えているわけです。

アルカイックな宗教をもたない人間はいないのに対して、特殊な宗教をもたない人間は結構います。日本人はだいたいそうかもしれません。そういうわけで、くま宗教学では、特殊な宗教ももちろん研究しますが、中心に研究するのはアルカイックな宗教です。特殊な宗教は、アルカイックな宗教から派生したものとして理解しています。ふつうの考えでは、ちゃんとした宗教と、宗教以前の宗教というように、逆に考えていることが多いので、くまぶしはちょっと不満です。

アルカイックな宗教というのは、前にいったことがあると思いますが、人間の基本的な条件であると思います。お盆の場合でいえば、やってきたものをおもてなしするというのは、基本的なことです。もっとも、もてなし方にはいろいろあって、そのやり方は文化によって違うでしょうが、おもてなしすることが基本的なことだというのはいいと思います。おもてなしをしたら、いいことをしてくれるだろうから、おもてなしをするということもあるかとは思いますが、それがすべてというわけでもないと思います。また、ちゃんとおもてなしをしないと、タタリの神さまみたいに、あばれることがあるかもしれませんが、だからといって、暴れられるのがいやだからお祭をするという言い方が正しいわけではないと思います。訪ねてくる人がいたら、とりあえずおもてなしをするということに、理由は必要ないと思います。

理由が必要ないということは、それが、基本的なことだからということだと思います。つまり、ご飯を食べたり、寝たり、遊んだりすることは、人間の基本的な行動です。「眠いから寝るのだ」というのは、一応の理由ですが、実際のところ、眠いから寝るのではなく、人間は寝るようにできているといった方が正しいと思います。同じように、やってくるものをもてなす(祭る)というのも、理由はさまざまつけることができるでしょうが、すべて後付けの理由にすぎないと思います。つまり、その理由ゆえにお祭をするのではなく、人間は、本質的にお祭をするようにできているわけです。

もっとも、私はお祭なんかしないという人は結構いるでしょうが、ここでいっているお祭というのは、文化的に規定されたお祭だけをさしているのではなくて、例えばご飯を食べたり、言葉を話したりするのも、くまぶしの考えではお祭の一種です。

ご飯を食べるというのは、やってくるものを体の中に入れることです。味がするのがお祭りです。うんちをするのは、食べたものとさようならをすることです。

何かを話すというのは、何かを発信することで、話を聞くというのは何かを受信することです。その意味でも十分お祭りですが、それだけではなく、そもそも、言語体系に依存して生きるということは、人間にとって基本的なことです。これは、文化的に形成された世界(世界解釈)の存在を前提にして、はじめて個々人がありうるということです。言葉なんて信じないと思ったとしても、そのように言葉で考える以外にないわけなので、結局のところ、言葉を信じないということは不可能なわけです。それで、言葉を使うということは、一種の文化的に決められたお祭を実践するということだといえると思います。

文化的に「無宗教」という宗教をもつことは可能ですが、言葉を信じないことが不可能であるように、本当に無宗教であることは不可能です。一般に「無宗教」というのは、くま宗教学でいう特殊な宗教をもっていないという意味だと思います。

要するに、くまぶしがアルカイックな宗教というのは、人間の定義であるわけですが、実をいうと、人間の基本的な条件を、アルカイックな宗教とよんでいるだけのことです。そういうわけで、宗教という言葉を使うのがいやな人は、別の言葉を使ってくれてもいいと思います。

ちょっとおおげさな話になってしまいましたぶし。本当は、盆踊りのこととか話そうかとおもってたのですが、アルカイックな宗教の話になってしまいましたね。

それではまた。おやすみなさいぶし。
aug. 14, 2008
永遠回帰のくまぶし2008目次

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