官職を持っている(自称している)人の個人名の書き方について、「苗字+官職+名前」という表記、つまり、
「島課長耕作」とか「羽柴筑前守秀吉」とかいう表記って、なんか変じゃないですか?
というシリーズの最終回です。
「センゴク」を読んで官職の表記について考えたこと。後編の1
「センゴク」を読んで官職の表記について考えたこと。後編の2
前回は、大鏡とか栄花物語での表記と、「古文書時代鑑」という本から鎌倉~江戸時代までの文書での表記についてみてみましたが、「苗字+官職+名前」という表記は一般的ではありませんでした。ただ、「古文書時代鑑」に載っている文書は、歴史上の有名人の筆跡をみるという目的で集められているものなので、名乗りについては、自分で書いたものであるか、手紙などで相手に呼びかける体のものが多く、だいたい予想はしていましたが、やっぱり「島課長耕作」式の表記はありませんでした。
「島課長耕作」式の表記は、軍記物的なジャンルでは、平家物語や吾妻鏡あたりから見られ、太平記あたりになるとたくさん見られるようになるのですが、その元ネタは、武士が使っていた苗字+排行名(「太郎」「次郎」「三郎」など、生まれた順に基づく通称)という表記法にあるんじゃないかと思います。 (more…)